以前、お勧めの本を教えてください、と書いた時、大勢の方からいろいろな本を教えていただきました。ありがとうございました。
ひとつひとつ、『読みましたよ』などとは記事にしないつもりでしたが、
先日ひとつ読みおえた本がとても素晴らしかったことをお伝えしたいと思いました。
りす美さんからご紹介いただいた、
『ダックコール』 稲見一良 (いなみ いつら)著
野鳥の居る風景が多く登場し、最近見聞き慣れはじめた野鳥の名前が多数でてくることにまず驚きました。
作家の稲見さん、鳥に詳しいですね。作品にこれだけ鳥の名前がでてくるのって結構珍しい気がします。
鳥だけでなく、銃のことや、山のこと、人生の事。
実にいろんなことが語られています。
登場人物は、どこかストイックで、純真で、小気味よい有能さを見せてくれます。
いろんな意味で社会という枠から少しはみ出た人が多く登場するせいか、小説の中の時間の流れ方もゆったりとしています。
稲見さんは沢山の翻訳小説を読んでおられたんだろうなと思いました。
読んでいて、どこか外国の作家の翻訳小説を読んでいるような感じをうけます。
なんでだろう。文のリズムから来るものなのかしら...?
はっきりと日本が舞台の作品でも、なんとなくここは外国、と思えるような感覚におそわれる作品もありますし、一方でアメリカを舞台にした小説が逆にリアリティーがあったりします。
さりげなくそのときの状況のなかで最高に美味な食べ物が出てくるのも好印象です。
掲載の短編はどれもこれもおもしろくよみました。
『ホイッパーウィル』のラストで故郷を目指す男の事を思ってほろりと涙がこぼれました。
『密漁志願』悪ガキ二人組の奮闘、読み応えありました。
他の短編でもそれぞれにいろいろな思いを持ちました。
りす美さん、この本を薦めてくださってどうもありがとうございます。
鳥、という観点だけでなく、ほんとうにいろいろな人生について思いをはせ、
かつ、読後、とても爽やかな気持ちになれる本でした。
わたしは今後もこの本を何度も読みかえすと思います。